「職業訓練を受けたいけれど、どのコースを選べばいいかわからない」
そう感じている方は多いのではないでしょうか。ハローワークに行けばパンフレットが並んでいますが、コース名を見ただけでは実際の人気や競争率はわかりません。「せっかく申し込んだのに落ちた」という事態は、できれば避けたいところです。
そこでこの記事では、これからのコース選びの参考となるよう、2025年に東京都で実施された民間委託訓練302講座のデータをもとに、11の分野に分類してランキング化しました。
応募倍率、コース数、応募者数の3つの角度から比較し、過去のトレンド推移まで分析しています。
2025年実績の1位は「CAD・宅建不動産」(応募倍率1.18倍)。全体の平均倍率は0.97倍で、以前のような「狭き門」から大きく変わり、比較的受講しやすい環境になっています。2026年に受講を検討している方は、コース選びの判断材料としてぜひ参考にしてください。
【2025年実績】この調査の概要
- 調査期間:2025年1月〜2025年12月開講分(1年間)
- 訓練種類:東京都民間委託訓練
- コース数:302講座(11分野に分類)
- 総定員数:7,482名
- 総応募者数:7,254名
- 合格者数:5,998名(合格率約82.7%)
- 平均応募倍率:0.97倍
※倍率は「応募者数÷定員」で算出(小数第2位を四捨五入)
データ出典:TOKYOはたらくネット
掲載講座のうち、分野に該当しない16講座と4月開講の1年講座は集計対象から除外し、残り302講座を11種類の分野別に分類して集計しています。
■目次
スポンサーリンク
【2026年対策版】職業訓練コース別 応募倍率ランキング(2025年実績)
まずは最も気になる「応募倍率」のランキングです。倍率が高いほど競争率が高く、人気のあるコースと言えます。それぞれのコース名をクリックすると詳細ページが表示されます。
| 順位 | コース種類 | 定員 | 応募者 | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 1位 | CAD・宅建不動産(17) | 400 | 472 | 1.18 |
| 2位 | 簿記会計・社会保険総務(48) | 1,241 | 1,409 | 1.14 |
| 3位 | 貿易・国際ビジネス(11) | 275 | 309 | 1.12 |
| 4位 | WEB制作(57) | 1,519 | 1,621 | 1.07 |
| 5位 | 観光トラベル(10) | 292 | 307 | 1.05 |
| 6位 | フードビジネス、栄養士(17) | 307 | 311 | 1.01 |
| 7位 | プログラミング(34) | 736 | 653 | 0.89 |
| 8位 | パソコン・オフィス(61) | 1,583 | 1,371 | 0.87 |
| 9位 | ネットワーク・セキュリティ(9) | 221 | 179 | 0.81 |
| 10位 | 医療事務(26) | 640 | 471 | 0.74 |
| 11位 | 介護初任者研修(12) | 268 | 151 | 0.56 |
| 合計 | 全302講座 | 7,482 | 7,254 | 0.97 |
※コース名の右側の数字は募集コース数です。
ランキング上位の分析とトレンド
数字だけ見ても判断しにくいと思うので、上位コースの人気の理由と、現在のトレンドを分析します。
1位:CAD・宅建不動産(応募倍率1.18倍)
ランキングでトップに立ったのは「CAD・宅建不動産」分野でした。数年前は中位だったのが、近年一気に首位に浮上しています。
この分野が1位になった理由は、シンプルに「就職に直結しやすいから」でしょう。宅建士なら不動産業界、CADなら建設・設計業界と、訓練後のゴールが明確です。「訓練を受けたのに就職先がない」というリスクが低い点が、求職者に選ばれている最大の理由です。
また、宅建士は国家資格として履歴書に強く、40代・50代でも年齢がハンデになりにくいのも魅力です。都市部での需要は安定しており、「確実に就職して長く働きたい」という層から、今最も支持されている分野と言えます。
2位:簿記会計・社会保険総務(1.14倍)
2位は簿記会計・社会保険総務。倍率1.14倍と安定した人気を維持しています。
この分野の最大の強みは、「どんな会社でも必要とされる」ところです。飲食、製造、IT、どの業界であっても経理や総務の仕事は必ず存在します。景気に左右されにくく、企業活動の根幹を支える職種であることが、安定志向の方に選ばれている理由でしょう。
職業訓練で簿記2級レベルを取得しておけば、未経験でもスキルの証明になり、採用のチャンスが広がります。万が一すぐに就職につながらなかったとしても、お金の知識は家計管理や副業など将来の選択肢を広げる武器になります。
3位:貿易・国際ビジネス(1.12倍)
3位は貿易・国際ビジネス。倍率1.12倍で、こちらも安定した応募状況です。
人気の理由は、「英語や中国語を活かして働きたい」という明確な目的を持った人が集まるからでしょう。貿易事務や国際営業は語学力だけでなく専門的な実務知識も求められますが、職業訓練ならその両方をセットで習得できます。
インバウンド需要の回復や国際物流の活発化により、グローバルな仕事のニーズは安定して伸びています。他分野にはない「語学」という武器が明確な差別化になるため、キャリアチェンジを狙う人にとっても強力な選択肢です。
WEB制作は4位に急落(1.07倍)
以前は応募倍率2倍超えで圧倒的な1位だったWEB制作は、現在では4位(1.07倍)にまで後退しました。
この急落には2つの要因があります。
まず、未経験でも参入しやすかった時期が終わったこと。HTMLやCSSだけでなく、WordPress運用やマーケティング知識まで求められるようになり、訓練期間だけでプロレベルに到達するのは難しいと感じる人が増えました。
そしてもうひとつ、決定的だったのが生成AIの登場です。「コーディングやデザインはAIで自動化できる」という認識が広まり、未経験レベルのスキルでは仕事がなくなるのではないかという不安が、志望者の減少に直結しました。
フード関連講座の増加と、介護分野の低倍率
近年の特徴として、フードビジネス・栄養士関連の講座が増えた点が挙げられます。応募倍率は1.01倍と高くはありませんが、一定の需要があることが確認できます。
一方、介護関連講座は依然として倍率0.56倍と大幅な定員割れが続いています。人材需要が非常に高い分野であるにもかかわらず応募が伸びない構造は変わっていません。「受かりやすさ」と「就職のしやすさ」の両面で見れば、介護は圧倒的な穴場とも言える分野です。
スポンサーリンク
職業訓練コース数ランキング
次に、「どの分野のコースが最も多く開催されているか」を見てみましょう。コース数が多い分野は、それだけ受講のチャンスが多いということです。
| 順位 | コース種類 | 募集講座数 | 応募人数 |
|---|---|---|---|
| 1位 | パソコン・オフィス | 61 | 1,371 |
| 2位 | WEB制作 | 57 | 1,621 |
| 3位 | 簿記会計・社会保険総務 | 48 | 1,409 |
| 4位 | プログラミング | 34 | 653 |
| 5位 | 医療事務 | 26 | 471 |
| 6位 | CAD・宅建不動産 | 17 | 472 |
| 7位 | フードビジネス、栄養士 | 17 | 311 |
| 8位 | 介護初任者研修 | 12 | 151 |
| 9位 | 貿易・国際ビジネス | 11 | 309 |
| 10位 | 観光トラベル | 10 | 307 |
| 11位 | ネットワーク・セキュリティ | 9 | 221 |
最も開催数が多いのはパソコン・オフィス関連(61コース)。事務職をはじめ、どんな仕事に就くにもパソコン操作は必須スキルとなっており、Word・Excel・PowerPointの基本から応用までを学ぶコースが毎月多数開催されています。
2位のWEB制作も57コースと非常に多くの募集が行われています。応募人数で見ると1,621人と全分野の中で最多です。倍率は下がったものの、依然として多くの求職者がWEBスキルに関心を持っていることがわかります。募集回数が多いため、受講のチャンスが広い分野です。
過去のデータで見る職業訓練の人気推移
ここからは、2019年・2022年・2025年の3つの年度データを比較します。数年間の推移で見ることで、一時的なブームなのか長期的なトレンドなのかが見えてきます。
応募倍率の推移(主要6分野)
| コース種類 | 2019年 | 2022年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| WEB制作 | 2.03倍 | 2.29倍 | 1.07倍 |
| プログラミング | 1.45倍 | 1.70倍 | 0.89倍 |
| パソコン・オフィス | 1.33倍 | 1.14倍 | 0.87倍 |
| 簿記会計・社会保険総務 | 1.30倍 | 1.19倍 | 1.14倍 |
| 医療事務 | 0.94倍 | 0.81倍 | 0.74倍 |
| 介護 | 0.57倍 | 0.66倍 | 0.56倍 |
※調査年:2019年(2018/8〜2019/7)、2022年(2021/9〜2022/8)、2025年(2025/1〜2025/12)。分野名は2025年版の名称に統一。
時代とともに変わる「人気コース」の条件
数年間のデータを振り返ると、職業訓練の人気は「その時代の社会情勢や働き方の変化」に強く影響されることがわかります。
2019年〜2022年は、コロナ禍の影響もあり「在宅で働ける」「手に職をつける」という理由でWEB制作やプログラミングが爆発的な人気を集めました。WEB制作は2022年に倍率2.29倍を記録しています。
しかし最近は、現実的な就職需要を重視する傾向が鮮明になりました。簿記会計やCAD・宅建不動産といった「明確な職種につながるスキル」が上位を占めるようになったのは、求職者が「学んだ後に本当に就職できるか」をシビアに見るようになった証拠でしょう。
こうした変化を踏まえると、コース選びで最も重要なのは「倍率の高さ」ではなく、「自分が本当に就きたい職種に必要なスキルかどうか」です。
スポンサーリンク
コース選びで失敗しないための3つのポイント
ランキングを見た上で、「じゃあどうやって選べばいいの?」と思った方へ。失敗しないためのポイントを3つに絞ってお伝えします。
1. 倍率だけで判断しない
倍率が高いコースが「良いコース」とは限りません。自分が本当に就きたい職種、学びたいスキルを基準に選ぶのが最も重要です。
倍率が低くても、就職需要が高い分野はたくさんあります。医療事務(0.74倍)や介護(0.56倍)は、受かりやすさと就職のしやすさを兼ね備えた「穴場」です。
2. 訓練期間と失業保険の残日数を照らし合わせる
職業訓練を受講する最大のメリットのひとつに、失業保険(基本手当)の手厚いサポートがあります。
ハローワークから「受講指示」を受けて訓練を受講する場合、以下のような大きな恩恵を受けられます。
受講指示を受けた場合の失業保険のメリット
- 給付制限の解除: 自己都合退職による給付制限期間(※2025年4月より原則1ヶ月などに短縮)が解除され、訓練開始とともに受給がスタートします。
- 支給期間の延長: 所定の給付日数が終わっても、訓練が終了するまで失業保険の支給が延長されます。
ただし、この延長等のメリットを受けるためには、訓練開始日の前日時点で失業保険の残日数が一定以上(所定給付日数によって異なります)必要になる場合があります。残日数と訓練期間のスケジュールを照らし合わせ、ハローワークの窓口で必ず事前に相談しましょう。
【ハローワーク窓口で確認すべきポイント】
- 自分が希望するコースで「受講指示」を受けられるか
- 現在の失業保険の残日数で、訓練延長給付の対象になるか
- 申し込みの締め切り日と選考スケジュール
3. 訓練校の見学会に参加する
多くの訓練校では、事前の見学会や説明会を実施しています。カリキュラムの内容、講師の雰囲気、教室の設備などを自分の目で確認することで、ミスマッチを防げます。
パンフレットだけではわからない情報が得られるので、積極的に参加してください。最低でも3ヶ月は毎日通う場所になります。通学時間や経路のシミュレーションもしておくと安心です。
まとめ。倍率が下がっている今こそチャンス
東京都で実施された民間委託訓練の応募状況ランキングをご紹介しました。
全体の平均応募倍率は0.97倍。以前のような高倍率で「入りたくても入れない」という状況から大きく変わり、比較的受講しやすい環境になっています。定員割れしているコースも複数あるため、しっかり対策をして臨めば合格の可能性は十分にあります。
職業訓練は、受講料無料で専門スキルを身につけられる貴重な制度です。倍率が下がっている今は、希望するコースを受講する絶好のチャンスとも言えます。
もうひとつ大事なのは申し込みのタイミングです。受けたい訓練があっても、多くの場合、開講の1ヶ月前には締め切られてしまいます。常に最新情報をチェックしておきましょう。
まずは最寄りのハローワークで相談し、パンフレットを集め、訓練校の見学会に参加してみてください。自分に合ったコースを見つけることが、再就職への確実な第一歩になります。
スポンサーリンク
よくある質問(FAQ)
倍率1.0倍以下なら必ず合格できますか?
いいえ、必ず合格できるわけではありません。倍率1.0倍以下でも選考は行われます。面接や筆記試験で「訓練を受ける意欲」「就職への本気度」が見られるため、しっかり準備することが重要です。
人気コースでも合格するコツはありますか?
あります。志望動機を具体的に説明できるようにすること、「なぜこのコースなのか」「修了後どう就職に活かすか」を明確にすることがポイントです。ハローワークの職業相談で事前にアドバイスをもらうのも有効です。特に倍率が高いコースでは「本気で就職を目指している」ことが合否を分けます。
定員割れのコースは就職に不利ですか?
いいえ、定員割れだからといって就職に不利ということはありません。医療事務や介護は人材需要が高い分野です。倍率が低いのは「応募者が少ない」だけであり、就職先がないわけではありません。むしろ「受かりやすくて就職もしやすい」穴場です。
おすすめのコースはどれですか?
一概には言えませんが、「就職需要」と「倍率のバランス」で考えると、簿記会計・社会保険総務(業種を問わず需要がある)、CAD・宅建不動産(専門性が高く就職先が明確)、医療事務(倍率が低く需要が安定)などが有力です。ただし最も重要なのは「自分が本当にやりたい仕事」です。
職業訓練を受けながら失業保険をもらえますか?
はい、できます。ハローワークから「受講指示」を受けて訓練を受講する場合、訓練期間中は失業保険の受給期間が延長されます。さらに、自己都合退職による給付制限期間も解除されます。詳しい条件はハローワークの窓口で確認してください。
複数のコースに同時に応募できますか?
基本的には1つのコースに絞って応募します。ただし、開講時期が異なる場合や、第一希望が不合格だった場合は、別のコースに再度応募することは可能です。詳しくはハローワークで確認しましょう。
参考・出典
- 厚生労働省「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令(給付制限の短縮等について)」
- 東京労働局「TOKYOはたらくネット(東京都委託訓練)」
- 厚生労働省「ハロートレーニング(公的職業訓練)について」



