職業訓練の役に立つ話

60代・65歳以上でも職業訓練は通える?年齢制限とおすすめコース解説

60代になって転職や再就職を考えたとき、「この年齢でも職業訓練に通えるのか」と不安に思う方は少なくありません。

結論から言えば、60代でも職業訓練は受講できます。年齢を理由に諦める必要はありません。実際にハローワークの職業訓練には60代の受講生も多く、新しいスキルを身につけて再就職を目指す人がいます。

ただし、「通える」ことと「就職につながる」ことは別の話です。60代の職業訓練で大切なのは、現実的に就職できるコースを選ぶこと。コース選びを間違えると、数ヶ月の訓練期間が無駄になりかねません。

この記事では、60代が知っておくべき職業訓練の基本、年齢制限の実態、おすすめコースと避けるべきコース、65歳以上の失業保険の扱い、公共職業訓練と求職者支援訓練の選び方まで、具体的に解説します。

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60代でも職業訓練に通えるのか?年齢制限の実態

まず最も気になるポイントからお答えします。

職業訓練の大半のコースには年齢の上限がありません。60歳でも、65歳でも、70歳を超えていても、働く意思があり就職を目指すなら受講資格があります。

一部に「若年者向け」のコースはありますが、逆に「50歳以上向け」「中高年向け」など、シニア層を対象にした専用コースも設けられています。

ただし、年齢制限がないからといって、どんなコースでも自由に選べるわけではありません。職業訓練はあくまで「就職するためのスキルを身につける場」であり、カルチャースクールや趣味の教室とは違います。この点が曖昧だと、ハローワークの相談段階で「そのコースは目的に合わない」と判断されたり、選考で不利になったりすることがあります。

「働く意思」が最重要条件

60代で職業訓練を受けるには、「訓練修了後に就職する意思」が明確に求められます。「スキルを身につけたい」「時間があるから通いたい」だけでは通りにくいのが現実です。

ハローワークの窓口では志望動機や就職への本気度を確認されますし、訓練校の選考でも面接や筆記試験で同様のチェックが入ります。

年齢が選考に影響するケース

年齢制限はなくても、年齢が選考にまったく影響しないわけではありません。特に若い世代向けの職種(IT、WEBデザインなど)のコースでは、就職の現実を考慮して、高年齢者の合格率が低くなる傾向があります。

これは年齢だけで落とすという話ではなく、訓練後に「就職につながりやすいか」を訓練校側が重視するためです。逆に言えば、60代でも就職につながりやすいコースを選べば、選考で不利になりにくいということです。

公共職業訓練と求職者支援訓練、どちらを選ぶか

職業訓練には大きく2つの制度があります。どちらを選ぶかは、失業保険(雇用保険)を受給できるかどうかで変わります。

あなたはどのタイプ?60代の訓練ルート

制度 対象者 訓練中の給付
公共職業訓練 雇用保険の受給資格がある方 失業給付+訓練延長給付+通所手当
(※65歳以上は原則対象外)
求職者支援訓練 失業保険を受給できない方・受給し終わった方 要件を満たせば月10万円+交通費

公共職業訓練(失業保険受給者向け)

公共職業訓練は、雇用保険の受給資格がある方を主な対象としています。失業保険を受け取りながら訓練を受けることができ、65歳未満の方が「受講指示」を受ければ、訓練期間中は失業給付が延長される仕組みもあります。

60代で退職した方でも、退職前に雇用保険に一定期間加入していれば受給資格があります。

雇用保険の加入期間要件

  • 65歳未満で離職:離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算12ヶ月以上(会社都合等は1年間に6ヶ月以上)
  • 65歳以上で離職:離職前1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上

※離職理由や過去の受給歴によって条件が異なる場合があります。詳細はハローワークで確認してください。

なお、2025年4月以降、自己都合退職の給付制限は原則1ヶ月に短縮されています。ただし、定年退職の場合、一般的には給付制限がつかない(待期期間7日間のみ)ケースが多いため、すぐに受給開始および訓練受講が可能な場合がほとんどです。

注意点として、65歳以上で退職した場合は「高年齢求職者給付金」という一時金になります。これは訓練による延長の対象にならないため、失業給付を延ばす目的で訓練に通うメリットはありません(詳しくは後述します)。

求職者支援訓練(失業保険がない方向け)

求職者支援訓練は、失業保険を受給できない方や、すでに受給し終わった方が対象です。自営業を廃業した方、専業主婦だった方、失業給付を使い切った方などが該当します。

世帯収入(月25万円以下・本人8万円以下 ※年金含む)や資産(300万円以下)などの厳格な要件(あくまで目安)を満たせば「職業訓練受講給付金」として月10万円+交通費が支給される場合もあります。求職者支援訓練はコースによっては倍率が低いこともあり、応募のハードルが比較的下がります。

併願はできない

ここは誤解されやすい点ですが、公共職業訓練と求職者支援訓練に同時に申し込むことはできません。訓練の申込みは原則として1件ずつです。あなたの状況(雇用保険を受給できるかどうか)によって、どちらの制度が入口になるかが変わります。

自分に合った制度を選ぶことが、結果的に合格と就職の近道です。迷った場合はハローワークの窓口で「自分の状況ではどちらが適切か」を相談してください。

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65歳以上の場合:失業保険の扱いに注意

「65歳を超えていても職業訓練に通えるのか」という質問がよく寄せられます。答えはイエスです。職業訓練に年齢の上限はありません。

ただし、金銭面の話をすると65歳以上で離職した場合、失業保険の扱いが大きく変わります

65歳未満VS65歳以上 失業保険の扱いの違い

項目 65歳未満で離職 65歳以上で離職
給付の種類 基本手当(月々の給付) 高年齢求職者給付金(一時金)
訓練中の延長 あり(受講指示の場合) なし
通所手当 あり(受講指示の場合) 原則なし(自己負担)
受講料 無料(テキスト代等は別) 無料(テキスト代等は別)

65歳になる前に失業給付を受けて職業訓練に通う場合(受講指示)、基本手当(失業保険)を受けながら職業訓練に通えることはもちろん、訓練期間中に給付日数が切れる場合でも、原則として訓練終了まで基本手当が延長されるメリットがあります。もちろん通所手当(交通費)も支給されます。

65歳以上で離職した場合は「高年齢求職者給付金」という一時金が支払われます(被保険者期間に応じて30日分または50日分)。これは一度受け取ったら終了であり、訓練に通っても給付期間が延びることはありません。

一方で、スキルを身につけて再就職するという本来の目的であれば、65歳以上でも職業訓練は有効な選択肢です。実際に介護やビル管理のコースには65歳以上の方が通っています。

65歳以上の方が訓練を検討する際のポイント

65歳以上の方は、公共職業訓練(無料)に通うか、要件を満たせば給付金が出る求職者支援訓練に通うかの選択になります。ただし、求職者支援訓練の給付金要件は年金受給者には厳しい場合もあります。ご自身の状況で何がベストか、ハローワークでシミュレーションしてもらいましょう。

60代におすすめの職業訓練コース

60代が訓練コースを選ぶ際に最も重要なのは、「実際に就職できるか」という視点です。いくらスキルを身につけても、その分野に60代向けの求人がなければ意味がありません。

ここでは、60代でも就職しやすく、実際に求人ニーズがあるコースを紹介します。

60代のコース選び 成功と失敗の分かれ道

介護系(介護職員初任者研修)

介護の現場は慢性的な人手不足が続いており、60代でも採用されるケースがあります。職業訓練では「介護職員初任者研修」(旧ヘルパー2級)の資格を取得できるコースが一般的です。

ただし、施設介護では夜勤がある場合も多く、体力面の負担は考慮が必要です。訪問介護やデイサービスなど日勤中心の仕事も選択肢に入れると良いでしょう。男性の場合、送迎ドライバー兼務での募集もあるため、運転が苦にならない方は有利です。

ビル管理・ビルメンテナンス系

ビル管理は比較的体力負担が少なく、60代でも長く働ける職種です。70歳を超えても働いている方もいます。

「ビルメン4点セット」と呼ばれる資格(第二種電気工事士、危険物取扱者乙種4類、2級ボイラー技士、第3種冷凍機械責任者)を取得できるカリキュラムが組まれているコースもあり、資格があると就職の幅が大きく広がります。

日本語教師・キャリアコンサルタント

日本語教師やキャリアコンサルタントは、人生経験が強みになりやすい職種です。特に日本語教師は高年齢者に人気があり、60代から始める方もいます。

オンライン授業の普及で在宅でも働けるようになってきた点も魅力です。ただし、すぐに高収入が得られる職種ではないため、収入面の期待値は現実的に考える必要があります。

造園・庭園管理

屋外での作業が苦にならない方には、造園や庭園管理もおすすめです。一定の体力は必要ですが、60代でも活躍している方は多くいます。東京都では高年齢者向けに「庭園施工管理科」が設けられています。

パソコン基礎

どの職種でも最低限のパソコンスキルは求められます。キータイピング、ワード、エクセルの基本操作ができることは事務補助や生活支援の仕事でも必須です。

ただし、「パソコンができれば就職できる」わけではありません。パソコン訓練は、介護・事務補助・生活支援など、他の方向性と組み合わせることで効果を発揮します。パソコン訓練だけで就職を目指すのは、60代では厳しい現実があります。

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60代が避けるべき職業訓練コース

逆に、60代が避けた方が良いコースもあります。これは年齢差別ではなく、現実的な就職可能性を考慮した判断です。

WEBデザイン・IT系

WEBデザインやプログラミングなどIT系のコースは、若い世代向けの求人が圧倒的に多く、60代で「未経験から正社員就職」を狙うのは難易度が非常に高いです。

「在宅でできる」「フリーランスになれる」という点に魅力を感じる方もいますが、プロとして安定して稼げるレベルに達するには相応の時間がかかります。納期に追われる働き方になることもあり、体力面でも厳しい現実があります。

特別なスキルが不要な職種の訓練

警備や清掃など、採用時に特別な知識や技能が求められない職種については、わざわざ数ヶ月の職業訓練を受ける必要性は低いでしょう。就職してから研修を受ければ十分な場合が多いため、訓練に通う時間と価値を天秤にかけて判断してください。

東京都の高年齢者向けコース

東京都では、50歳以上を対象とした「高年齢者向けコース」が充実しています。シニア層の就職を前提に設計されているため、60代でも受講しやすいのが特徴です。

主なコースは以下の通りです。

  • 庭園施工管理科
  • ビル管理科
  • 設備保全科
  • 電気設備管理科(高年齢者訓練)
  • 電気設備保全科
  • マンション維持管理科
  • 生活支援サービス科(訪問介護)

参考:高年齢者の科目(無料の科目) | 都立職業能力開発センター

他の都道府県にも高年齢者向けのコースがある場合があります。お住まいの地域のハローワークで確認してみてください。

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訓練期間と通学の現実

職業訓練の期間は、3ヶ月から6ヶ月が中心です。長いものでは1年、2年のコースもあります。

60代でこれだけの期間を訓練に充てることに不安を感じる方もいるかもしれません。ただ、訓練は「学び直し」だけでなく、就職活動の進め方や求人の探し方まで含めた支援を受けられる場でもあります。

受講中も就職活動は並行して進みます。「訓練を通い切ること」をゴールにするのではなく、「訓練を活用して就職する」という意識を持っておくと失敗しにくいです。ほとんどの受講生が訓練終了の1〜2ヶ月前から就職活動を始めています。

60代の訓練を通い切るためのポイント

  • 通学距離と通学手段を事前に確認する(毎日通える距離か)
  • 体力面に不安がある場合は、短期コース(3ヶ月)を検討する
  • 生活費のシミュレーションをしておく(失業給付の残日数・貯蓄で賄えるか)
  • 訓練中の就職活動を早めにスタートする

まとめ:60代の職業訓練は「コース選び」がすべて

60代でも職業訓練は受講できますし、実際に多くの方が新しいスキルを身につけて再就職を目指しています。

大切なのは、現実的なコース選びと就職への明確な意思です。

この記事のポイント

  • 職業訓練に年齢の上限はない。60代、65歳以上でも受講可能
  • 失業保険の有無で、公共職業訓練か求職者支援訓練かが変わる
  • 65歳以上は「高年齢求職者給付金」(一時金)になり、訓練による延長はない
  • おすすめは介護・ビル管理・造園など、60代の求人ニーズがある分野
  • WEBデザイン・IT系は60代未経験からの就職が非常に難しい
  • 東京都には50歳以上向けの専用コースが充実している

今後の日本は人口減少が続き、労働力不足が深刻化していきます。その中で、60代の人材もますます求められるようになるでしょう。職業訓練を活用して自分のスキルを磨き、仕事の幅を広げることは、これからの人生を充実させる有効な選択肢です。

まずはハローワークに足を運び、自分の年齢・離職状況で申し込めるコースがないか確認してみてください。

よくある質問

ハローワークで「年齢的に難しい」と言われたらどうすればいいですか?

ハローワークの窓口担当者によって説明や提案が異なる場合があります。就職への本気度や具体的な計画(希望職種、通学可能距離、訓練後の就職方針など)を明確に伝えることが重要です。それでも納得できない場合は、別の日に別の担当者に相談するのも一つの方法です。

60代で職業訓練に通っている人は実際にいますか?

はい、多くの60代の方が通っています。特に介護、ビル管理、日本語教師、造園などのコースでは、60代の受講生は珍しくありません。高年齢者向けコースであれば、受講生の大半が50〜60代です。

訓練後、本当に就職できますか?

コース選びと本人の努力次第です。求人ニーズがある分野を選び、資格を取得し、積極的に就職活動を行えば、60代でも就職は十分に目指せます。ただし、「訓練を受ければ自動的に就職できる」わけではありません。

65歳以上で失業保険がなくても職業訓練は受けられますか?

受けられます。失業保険の有無は訓練受講の条件ではありません。ただし、65歳以上は失業給付が一時金(高年齢求職者給付金)になるため、訓練による延長はありません。どの制度で申し込むのが適切かは、ハローワークで確認してください。

職業訓練校の年齢層はどのくらいですか?

コースによって大きく異なります。IT系は20〜30代が中心ですが、介護やビル管理は40〜60代が多い傾向です。高年齢者向けコースであれば同世代の受講生が多く、安心して学べます。

定員割れしているコースは合格しやすいですか?

一般的に倍率が低いほど合格しやすくなる傾向はあります。特に求職者支援訓練では定員割れのコースもあります。ただし「誰でも合格する」わけではなく、面接や筆記試験で就職意欲や受講目的は確認されます。

訓練を途中で辞めることはできますか?

できますが、推奨はされません。途中退校すると次の訓練受講が制限される場合があり、失業給付にも影響が出ます。自己都合退校の場合は基本手当に1ヶ月の給付制限(※受講指示の場合)がかかることもあります。どうしても継続が難しい場合は、自己判断で欠席を重ねる前に、必ず訓練校とハローワークに相談してください。

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