「職業訓練って聞いたことはあるけど、具体的にどんな制度なの?」「無料で通えるって本当?」「失業保険をもらいながら学べるの?」と疑問に思っていませんか。
職業訓練は、仕事を探している方が無料(一部有料コースあり)でスキルを学べる国の制度です。さらに、条件を満たせば失業保険を受け取りながら、または月10万円の給付金をもらいながら通うこともできます。
この記事では、職業訓練の基本的な仕組みから、公共職業訓練と求職者支援訓練の違い、受講できる条件、申し込み方法、そして「どんな人が対象なのか」まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
■目次
職業訓練とは
職業訓練は、仕事を探している方向けに、就職に必要なスキルや資格を身につけるための学校です。国や都道府県が実施する公的な制度で、多くのコースが無料で受講できます。
訓練期間は3ヶ月から6ヶ月のコースが一般的ですが、1年や2年の長期コースもあります。パソコン・事務系から、電気・機械、医療・介護、ファッション系まで、幅広い分野のコースが用意されています。
職業訓練の法的根拠
厚生労働省の資料でも、職業訓練の責務について「職業能力開発促進法」に基づく考え方が示されています。
国及び都道府県の責務:「職業を転換しようとする労働者その他職業能力の開発及び向上について特に援助を必要とする者に対する職業訓練の実施」、「事業主、事業主団体等により行われる職業訓練の状況等にかんがみ必要とされる職業訓練の実施」に努めなければならない。(職業能力開発促進法第4条2項)
簡単に言えば、「在職中や求職中にかかわらず、職を変わろうとしている者の能力向上を援助する」ということです。
職業訓練が必要な理由
大人になってから新しいことを覚えるのは大変です。いざ転職しようとしても、経験や資格がないために希望の仕事に就けない人は大勢います。また、独学では難しい資格試験も当然あります。
職業訓練は、生徒と先生という通常の学校スタイルで、授業を受けたり質問したりしながら、希望の仕事に向けて必要なスキルを身につけることができます。資格取得についてのアドバイスも受けられるため、効率的に就職準備を進められます。
職業訓練の2つの種類
職業訓練には大きく分けて2つの種類があります。どちらを受講するかは、雇用保険(失業保険)の受給資格があるかどうかで決まります。
公共職業訓練
公共職業訓練は、主に雇用保険の受給資格がある方向けの訓練です。都道府県や独立行政法人が実施しており、幅広いコースが用意されています。
雇用保険受給者が公共職業訓練を受講すると、訓練期間中は失業保険の給付が延長され、訓練修了まで受給できます(後述の受講指示を受けた場合)。
詳しくは公共職業訓練について(対象者とメリット)をご覧ください。
求職者支援訓練
求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない方向けの訓練です。雇用保険に加入していなかった方、受給期間が終了した方、自営業を廃業した方などが対象となります。
一定の要件(所得要件など)を満たせば、訓練期間中に月10万円の職業訓練受講給付金と交通費が支給されます。
詳しくは求職者支援訓練について(対象者とメリット)をご覧ください。
どちらのタイプも受講できる
雇用保険受給者は公共職業訓練、受給できない方は求職者支援訓練という区分はありますが、実際にはどちらのタイプの訓練も受講申し込みが可能です。コース内容や開講時期によって選択できます。
ただし、受講中に受け取れる給付は別です。失業保険の延長(受講指示が前提)なのか、月10万円の職業訓練受講給付金(所得・資産などの要件が前提)なのかは、本人の状況と要件で決まります。
職業訓練で学べるコース
職業訓練では、パソコンを学ぶ基礎コースから、就職に直接結びつく専門的なコースまで、様々な分野のコースが用意されています。
主なコース分野は以下の通りです。
- 事務・パソコン系(OA事務、経理事務、Webデザインなど)
- IT・プログラミング系(Java、Python、ネットワーク技術など)
- 医療・介護系(医療事務、介護職員初任者研修など)
- 建築・設備系(CAD、電気工事、配管など)
- 製造・技術系(機械加工、溶接、電気設備など)
- 販売・サービス系(販売士、ファッション、美容など)
- その他専門分野(貿易実務、国際ビジネス、観光など)
地域によって開講されるコースや開講時期は異なります。詳しくははじめての職業訓練コース選びをご覧ください。
受講料と費用負担
受講料は原則無料
職業訓練の受講料は、一部を除き無料です。ただし、1年以上の長期コースの場合、有料となるコースもあります。
テキスト代は自己負担
受講料が無料でも、テキスト代は自己負担となります。コースによって異なりますが、おおむね1万円前後が目安です。専門的なコースや長期コースでは、2万円~3万円程度かかる場合もあります。
訓練期間中に受け取れる手当
職業訓練に通うと、条件を満たせば以下のような手当を受け取れます。
雇用保険受給者の場合
雇用保険の受給資格がある方で、ハローワークから受講指示を受けた場合、以下の手当が支給されます。
受講指示とは、ハローワークが「この訓練を受けて就職を目指しましょう」と判断し、受講を指示することです(受講できるだけで自動的に指示が出るわけではありません)。
- 失業保険(基本手当)を訓練修了まで受給可能(延長あり)
- 交通費(通所手当)
- 受講手当(1日500円、最大40日分)
詳しくは職業訓練の受講指示・受講推薦・支援指示とはをご覧ください。
雇用保険を受給できない方の場合
雇用保険の受給資格がない方でも、一定の要件(世帯収入や資産など)を満たせば、以下の給付を受けられます。
- 職業訓練受講給付金:月10万円
- 通所手当(交通費)
詳しくは求職者支援訓練についてをご覧ください。
職業訓練を受講できる人・受講条件
基本的な受講資格
職業訓練は「仕事を探している方」が対象です。職業訓練は平日毎日授業があり、おおむね朝10時から夕方4時くらいまでの時間帯で実施されます(訓練施設によって開始・終了時刻は異なります)。
「毎日」と言っても、基本は平日(週5日)です。休みは土日祝になることが多いですが、コースによっては行事や補講が入る場合もあるため、「週に何回通うのか」「何時から何時までか」は募集要項で必ず確認してください。
そのため、フルタイムで働いている方は受講が難しくなります。ただし、申込時点では在職中でも問題ありません。訓練開始日までに退職予定であれば申し込めます。
こんな方が受講できます
- 現在求職中の方(雇用保険受給中、受給終了後、加入歴なしを問わず)
- 在職中だが、訓練開始日までに退職予定の方
- 自営業を廃業し、次の仕事を探している方
- パート・アルバイトをしながら正社員就職を目指している方(訓練に毎日出席できる場合)
受講が難しいケース
- フルタイムで働いており、平日毎日訓練に出席できない方
- 就職する意思がなく、趣味や教養のために学びたい方
- すでに希望する職種で働いており、スキルアップのみが目的の方
申し込み方法と選考
申込窓口はハローワーク
職業訓練の申込窓口は、お住まいの住所を管轄しているハローワークです。ただし、直接申込に行っても受け付けてもらえないことがあります。
事前に制度説明や訓練内容について相談した上で、申込を受け付けるのが一般的です。まずはハローワークの職業訓練窓口で相談してください。
事前に確認すべきこと
ハローワークで相談する際、以下の点を確認しましょう。
- 現在募集中のコースと開講時期
- 希望するコースの訓練内容と期間
- 給付金(失業保険または職業訓練受講給付金)の対象になるか
- 申込期限と選考日程
- 施設見学会の日程
選考方法
職業訓練を受講するには、必ず選考があります。コースによって選考方法は異なりますが、以下の3パターンがあります。
- 書類選考のみ
- 書類選考+面接
- 書類選考+面接+筆記試験(適性検査など)
定員があるため、応募者が多い場合は選考で不合格になることもあります。就職に向けての意欲や、訓練内容と希望職種の一致度などが重視されます。
施設見学会への参加がおすすめ
すべてのコースについて、事前に施設見学会が開催されます。実際に訓練施設を見学し、担当講師の説明を聞くことで、自分に合ったコースかどうかを判断できます。施設見学会への参加は必須ではありませんが、選考でも有利に働く場合があるため、できる限り参加することをおすすめします。
職業訓練を検討する際の注意点
希望するコースが常に募集中とは限らない
受けたい時に受けたいコースがあるとは限りません。これが職業訓練の最大の注意点です。
職業訓練自体は毎月何らかのコースが開講されますが、希望のコースが毎月開催されているわけではありません。人気コースや専門的なコースは、数ヶ月に1回しか開講されない場合もあります。
計画的な情報収集が重要
在職中でも申込は可能です。退職時期を調整できる方は、希望するコースの開講時期に合わせて退職日を設定することもできます。
まずはハローワークで募集中の職業訓練を確認し、今後の開講予定も含めて相談することをおすすめします。ハローワークでは、募集中のすべてのコース情報を閲覧できます。
訓練期間中の生活費も考慮する
失業保険や職業訓練受講給付金を受給できる場合でも、それだけで生活できるかどうかは個人の状況によります。特に扶養家族がいる方は、訓練期間中の生活費についても事前に計画を立てておくことが大切です。
まとめ:職業訓練は使える制度
職業訓練は本当にお得な制度です。無料で専門的なスキルを学べる上、条件を満たせば給付金を受け取りながら通うこともできます。
興味がある職業訓練コースがあれば、ぜひ検討してみてください。事前に施設見学会に参加し、実際に学校を見て判断するのも良いでしょう。
ただし、希望するコースがいつでも募集中とは限りません。事前に情報収集し、開講時期に合わせて計画的に行動することが成功のポイントです。在職中の方も、まずは一度ハローワークに相談に行くことをおすすめします。
よくある質問
Q1. 在職中でも職業訓練に申し込めますか?
A. 申込時点では在職中でも問題ありません。ただし、訓練開始日までに退職し、訓練期間中は平日毎日出席できる状態である必要があります。退職予定日と訓練開始日を調整できる方は、在職中から申込準備を進めることができます。
Q2. 失業保険を受給していないと職業訓練は受けられませんか?
A. 失業保険を受給していなくても職業訓練は受講できます。雇用保険の受給資格がない方は「求職者支援訓練」を受講でき、一定の要件を満たせば月10万円の職業訓練受講給付金を受け取ることができます。
Q3. 職業訓練を途中でやめることはできますか?
A. 途中退校は可能ですが、やむを得ない理由がない限り推奨されません。途中退校すると、失業保険の延長措置が打ち切られたり、職業訓練受講給付金が支給停止になったりします。また、正当な理由なく退校した場合、次回の職業訓練申込が不利になる可能性もあります。
Q4. 選考に落ちた場合、別のコースに再申込できますか?
A. 再申込は可能です。選考に落ちても、別のコースや次回開講時に再度申し込むことができます。選考で不合格になった理由をハローワークで相談し、次回の申込に活かすことをおすすめします。
Q5. 職業訓練に年齢制限はありますか?
A. 基本的に年齢制限はありません。若年層向けのコースから、中高年向けのコースまで幅広く用意されています。ただし、一部の専門コースでは年齢要件が設定されている場合もあるため、ハローワークで確認してください。
Q6. 訓練期間中にアルバイトはできますか?
A. 訓練に支障がない範囲であれば、短時間のアルバイトは可能です。ただし、失業保険を受給している場合は、週20時間未満の就労が目安になります。週20時間以上になると扱いが変わる場合があるため、働き方と申告方法は事前にハローワークで確認してください。また、アルバイト収入によって職業訓練受講給付金の支給要件(所得要件)を満たさなくなる可能性もあるため注意が必要です。
Q7. 希望するコースがない場合、どうすればいいですか?
A. まずはハローワークで今後の開講予定を確認してください。数ヶ月先まで開講スケジュールが決まっている場合があります。また、近隣の別地域(別のハローワーク管轄)で希望するコースが開講されている場合、そちらに申し込むことも可能です。