キャリアコンサルタントやキャリアサポーターは、人のキャリア形成を支援する専門職です。職業訓練でこの分野のスキルを学べるコースが開催されていますが、「キャリアコンサルタント」は国家資格の名称独占資格となったため、訓練校では「キャリアサポーター養成科」という名称を使うケースが多くなっています。
よくある疑問が「キャリアサポーターは資格なの?」「キャリアコンサルタントの職業訓練を受ければなれるの?」という点です。この記事では、キャリア支援の職業訓練について、訓練内容、目指せる資格、就職先、そしてキャリアコンサルタントとキャリアサポーターの違いまで詳しく解説します。
■目次
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キャリアコンサルタントとキャリアサポーターの違い
まず、この2つの用語の違いを理解することが重要です。
キャリアコンサルタント(国家資格)
キャリアコンサルタントは、2016年4月に創設された名称独占の国家資格です。資格を持たない人がこの名称を使うことは法律で禁止されています。
国家資格を取得するには、以下のいずれかのルートが必要です。
- 厚生労働大臣が認定する講習(150時間)の課程を修了
- キャリアコンサルティング技能検定に合格
- 3年以上のキャリアコンサルティング実務経験(受験資格として認定される場合)
これらの条件を満たした上で、キャリアコンサルタント国家試験(学科試験+実技試験)に合格する必要があります。なお、認定講習は2020年4月からカリキュラムが拡充され、従来の140時間から150時間に変更されています。
キャリアサポーター(訓練修了者の呼称)
キャリアサポーターは、職業訓練でキャリア支援のスキルを学んだ方を指す呼称です。国家資格ではありませんが、訓練校が便宜上使う名称(修了者の呼び方)として、キャリア支援に必要な知識とスキルを体系的に学んだ証明となります。
職業訓練(4ヶ月程度)では、キャリアコンサルタント国家資格取得に必要な知識の基礎部分を学びますが、訓練修了だけでは国家資格は取得できません。ただし、訓練で得た知識は、人材業界や企業の人事部門などで実務経験を積む際の土台となります。
名称変更の経緯
以前は「キャリアコンサルタント養成科」という名称の職業訓練がありましたが、2016年の国家資格化に伴い、資格を持たない訓練修了者が「キャリアコンサルタント」を名乗ることができなくなりました。そのため、多くの訓練校が「キャリアサポーター養成科」という名称に変更しています。
職業訓練の目的と内容
キャリアサポーター養成科の訓練は、単なる転職・求職活動支援のテクニックではなく、相談者の自立的なキャリア形成を支援するための総合的なスキルを学びます。
訓練の目的
この訓練では、以下のようなスキルの習得を目指します。
- 個人が自らキャリア・マネジメントにより自立・自律できるように支援する力
- 仕事のやりがいや意欲面も重視した支援ができる力
- 若年者、女性、障がい者など、多様な対象者への支援スキル
- 定年後のキャリア、生活困難者への支援など、幅広い場面で活かせる知識
これらのスキルは、人材業界だけでなく、接客・販売職、介護職、営業職など、人と関わる仕事全般で活用できる汎用性の高いものです。
対象者
訓練の受講にあたっては、通算でおおむね3年以上の仕事経験があると望ましいとされています。これは、キャリア支援を行う際に、自身の職務経験が相談者への共感や助言に活きるためです。
ただし、これは絶対条件ではなく、募集要項や選考基準は訓練校・地域で異なる場合があります。「必須」と誤解しないよう、必ずハローワーク(募集要項)で詳細を確認しましょう。

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具体的な訓練内容
キャリアサポーター養成科は、4ヶ月(総訓練時間400時間)程度のコースが標準的です。学科と実技をバランスよく組み合わせたカリキュラムで、実践的なスキルを身につけます。
学科科目の内容
| 科目 | 科目の内容 | 時間 | |
|---|---|---|---|
| 学科 | 職業能力基礎講習 | 自己理解、仕事理解、職業意識、職場内のコミュニケーション、聴き方・話し方、ビジネスマナー | 32 |
| 安全衛生 | 安全衛生の必要性、VDT作業の留意点(適した作業環境など) | 2 | |
| キャリア・コンサルティング概論 | キャリア形成支援の必要性、キャリア・コンサルティングの役割の理解、キャリア・コンサルティングを担う者の活動範囲と義務 | 15 | |
| 相談業務の基礎理論 | 主要なカウンセリング理論の概要、相談業務を行うにあたって必要となる基礎的な心理学の知識(発達・認知・学習・記憶・動機付け等) | 20 | |
| キャリア・コンサルティングの基礎理論 | キャリア発達理論、職業指導理論、職業選択理論等のキャリア開発に関する代表的な理論の概要(基礎知識) | 25 | |
| 相談実施に係る基礎知識 | 自己理解の重要性と支援方法、仕事・職業情報に関する知識と入手方法、職業能力開発の知識、職業キャリアの発達とライフステージや転機に関する理解、相談者の類型的・個人的特性、労働市場に関する理解 | 40 | |
| 人事・労務管理概論 | 企業における雇用管理の仕組み、人事労務施策・制度の動向と課題、企業内キャリア形成支援、能力評価基準、ワークライフバランス、労働関係法規及び社会保障制度の基礎知識、人事企画、労使関係の基礎知識 | 45 | |
| メンタルヘルス・マネージメント | 職場におけるメンタルヘルスの知識、ストレス理論、職場のメンタルヘルスケア、休職・復職の流れ、職場での相談による支援、メンタルヘルスケア計画、教育研修 | 30 | |
| 人材マネージメント概論 | 企業における組織と人事制度、目標管理、教育研修、キャリア発達支援、人材戦略と人材業界 | 35 | |
| 実技 | 対人支援スキル演習 | 基礎的コミュニケーション、支援者としてのかかわり方、基礎的な傾聴スキル、リーダーシップ、グループ支援スキル | 25 |
| 傾聴スキル演習 | ロジャースの理論と技法、自己一致、無条件の肯定的関心、共感的理解、関係の構築・ラポール形成 | 25 | |
| キャリア・コンサルティングの進め方 | 相談場面の設定、「自己理解」の支援、「仕事理解」の支援、「意志決定」の支援、「方策の実行」の支援 | 25 | |
| キャリア・コンサルティング演習 | キャリア開発に関する支援の方法、キャリア・プランの作成支援の方法、具体的な目標設定への支援の方法、ライフプランニングの作成支援の方法、新たな仕事への適応、相談過程の総括、事例検討 | 50 | |
| 求職活動指導スキル演習 | 自己理解、職業理解の活用方法、求職情報の探索・活用方法、応募書類のチェック、面接対策の指導スキル | 25 | |
| その他 | 職業人講話 | 6 | |
| 総訓練時間:400時間 | |||
カリキュラムの特徴:ロールプレイの重視
この訓練の最大の特徴は、多くの時間をロールプレイ(実技演習)に充てることです。
ロールプレイでは、3人一組(相談役、キャリア・コンサルタント役、観察役)になり、実際に困りごとや職業に関する相談を行います。観察役が客観的な目で良かった点や改善点を評価するため、実践的なフィードバックを受けながらスキルを磨くことができます。
人は「信頼関係」がないと本音を話してもらえません。このロールプレイを繰り返すことで、信頼関係づくりから学べるため、コミュニケーションスキルの向上が見込めます。このスキルは、キャリア支援だけでなく、接客や販売職、介護職、営業などにも役立ちます。
訓練で目指せる資格
メンタルヘルス・マネジメント検定
キャリアサポーター養成科では、以下の資格を任意受験で目指すことができます。
・メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種(ラインケアコース)
・メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅲ種(セルフケアコース)
※任意受験
メンタルヘルス・マネジメント検定試験は、働く人たちの心の不調の未然防止と活力ある職場づくりを目指して、職場内での役割に応じて必要なメンタルヘルスケアに関する知識や対処方法を習得するための資格です。
各級の到達目標
Ⅱ種(ラインケアコース)の到達目標は、「部下が不調に陥らないよう普段から配慮するとともに、部下に不調が見受けられた場合には安全配慮義務に則った対応を行うことができる」ことです。管理職やチームリーダーを目指す方に適しています。
Ⅲ種(セルフケアコース)の到達目標は、「自らのストレスの状況・状態を把握することにより、不調に早期に気づき、自らケアを行い、必要であれば助けを求めることができる」ことです。すべての働く人に役立つ内容となっています。
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種(ラインケアコース)合格率
| 受験者(人) | 実受験者(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
|---|---|---|---|---|
| 第34回(2023.3) | 13,545 | 11,918 | 6,444 | 54.1% |
| 第35回(2023.11) | 13,767 | 12,416 | 6,712 | 54.1% |
| 第36回(2024.3) | 15,934 | 14,126 | 7,987 | 56.5% |
Ⅱ種の合格率は50〜60%程度で推移しています。しっかりと訓練で学習すれば、十分合格を目指せるレベルです。
メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅲ種(セルフケアコース)合格率
| 受験者(人) | 実受験者(人) | 合格者数(人) | 合格率(%) | |
|---|---|---|---|---|
| 第34回(2023.3) | 5,671 | 5,035 | 3,995 | 79.3% |
| 第35回(2023.11) | 6,324 | 5,744 | 4,131 | 71.9% |
| 第36回(2024.3) | 6,897 | 6,112 | 4,409 | 72.1% |
Ⅲ種の合格率は70〜80%程度と高く、比較的取得しやすい資格です。
国家資格キャリアコンサルタントへのステップ
職業訓練修了後、実務経験を積みながら、国家資格キャリアコンサルタントの取得を目指すこともできます。その場合、以下のステップが考えられます。
- 職業訓練(4ヶ月)でキャリア支援の基礎を学ぶ
- 人材業界や企業の人事部門で実務経験を積む(3年以上)
- 厚生労働大臣認定講習(150時間)を受講する、または実務経験のみで受験資格を得る
- 国家試験(学科+実技)を受験し、合格する
職業訓練は国家資格取得への第一歩となりますが、訓練修了だけでは国家資格は取得できない点に注意が必要です。
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主な就職先の業種・職種
キャリアサポーター養成科を修了した方の主な就職先は以下の通りです。
人材ビジネス業界
- 人材紹介会社のキャリアアドバイザー
- 人材派遣会社のコーディネーター
- 転職エージェントのキャリアカウンセラー
訓練で学んだ求職活動支援スキルや面談スキルが直接活かせる分野です。
企業の人事労務部門
- 社員のキャリア形成支援担当
- 人事・採用担当
- 社員研修・教育担当
企業内で社員のキャリア支援を行う役割です。メンタルヘルス・マネジメントの知識も活かせます。
教育・福祉・公務関連
- 学校のキャリア教育担当
- 就労支援施設のスタッフ
- ハローワークの相談員(一部)
- 生活困窮者支援施設のスタッフ
その他の人と関わる仕事全般
訓練で得たコミュニケーションスキルやカウンセリングスキルは、以下のような仕事にも活かせます。
- 接客・販売職
- 介護職
- 営業職
- カスタマーサポート
これらの職種では、相手の話を傾聴し、ニーズを理解し、適切な提案をするというキャリア支援の基本スキルが大いに役立ちます。
訓練からの就職とキャリアパス
職業訓練修了だけでキャリアコンサルタントになれるか?
結論から言うと、職業訓練修了だけでは国家資格キャリアコンサルタントにはなれません。また、訓練修了者が「キャリアコンサルタント」という名称を使うことも法律で禁止されています。
ただし、訓練で得た知識とスキルは、以下のようなキャリアパスの土台となります。
現実的なキャリアパス
パターン1:人材業界で実務経験を積むルート
- 職業訓練修了後、人材業界(派遣会社、紹介会社など)に就職
- キャリアアドバイザーやコーディネーターとして実務経験を積む(3年以上)
- 実務経験を活かして国家資格キャリアコンサルタントを取得
- より専門性の高いポジションや独立を目指す
パターン2:企業の人事部門で活躍するルート
- 職業訓練修了後、企業の人事・総務部門に就職
- 社員のキャリア形成支援や採用業務を担当
- 必要に応じてメンタルヘルス・マネジメント検定や産業カウンセラーなどの資格を追加取得
- 人事のスペシャリストとしてキャリアアップ
パターン3:汎用スキルとして活用するルート
- 職業訓練で得たコミュニケーションスキルを活かして接客・販売・介護・営業などに就職
- 顧客や利用者との信頼関係構築に訓練で学んだスキルを活用
- 職場でのリーダーシップやマネジメントに発展させる
訓練修了後の現実的な評価
職業訓練修了は「キャリア支援の基礎を体系的に学んだ証明」となります。人材業界や人事部門への就職活動では、未経験者よりも有利になる可能性があります。ただし、最終的には面接での人柄やコミュニケーション能力も重視されます。
また、訓練で得た傾聴スキルや信頼関係構築のスキルは、どのような職種でも活かせる汎用性の高いスキルです。直接キャリア支援の仕事に就かなくても、十分に価値のある学びといえます。
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まとめ
キャリアサポーター養成科の職業訓練は、キャリア支援の基礎を体系的に学べる貴重な機会です。国家資格「キャリアコンサルタント」の名称は資格保持者のみが使えますが、訓練で得た知識とスキルは、人材業界、企業の人事部門、教育・福祉分野など、幅広い場面で活かせます。
特に、ロールプレイを中心とした実践的なカリキュラムにより、傾聴スキルや信頼関係構築のスキルを磨くことができます。これらのスキルは、キャリア支援だけでなく、接客・販売・介護・営業など、人と関わるあらゆる仕事で役立つ汎用性の高いものです。
訓練修了だけでは国家資格キャリアコンサルタントにはなれませんが、実務経験を積みながら資格取得を目指すステップの第一歩として、また、人間関係やコミュニケーションの質を高める自己投資として、十分に価値のある訓練といえるでしょう。
よくある質問
職業訓練を受ければキャリアコンサルタントになれますか?
いいえ、職業訓練修了だけでは国家資格キャリアコンサルタントにはなれません。国家資格を取得するには、厚生労働大臣認定講習(150時間)の修了または3年以上の実務経験などが必要で、その上で国家試験に合格する必要があります。職業訓練はキャリア支援の基礎を学ぶ場であり、国家資格取得への第一歩と位置づけられます。また、訓練修了者が「キャリアコンサルタント」という名称を使うことは法律で禁止されています。
キャリアサポーターとキャリアコンサルタントの違いは何ですか?
キャリアコンサルタントは2016年4月に創設された名称独占の国家資格で、資格を持たない人がこの名称を使うことは法律で禁止されています。一方、キャリアサポーターは職業訓練でキャリア支援のスキルを学んだ方を指す呼称で、国家資格ではありません。以前は「キャリアコンサルタント養成科」という訓練がありましたが、国家資格化に伴い、多くの訓練校が「キャリアサポーター養成科」という名称に変更しています。
訓練でメンタルヘルス・マネジメント検定は取得できますか?
メンタルヘルス・マネジメント検定は任意受験の資格です。訓練カリキュラムの中でメンタルヘルス関連の知識を学びますが、資格試験は訓練とは別に受験する必要があります。Ⅲ種(セルフケアコース)の合格率は70〜80%程度、Ⅱ種(ラインケアコース)の合格率は50〜60%程度です。訓練で学んだ知識をもとに、しっかり準備すれば合格を目指せます。
未経験でも人材業界に就職できますか?
はい、職業訓練修了により未経験でも人材業界への就職の可能性は高まります。人材紹介会社や派遣会社では、キャリアアドバイザーやコーディネーター職で未経験者を採用するケースがあります。訓練で体系的にキャリア支援の基礎を学んだことは、面接でのアピールポイントになります。ただし、最終的にはコミュニケーション能力や人柄も重視されるため、訓練で得たスキルを実際に発揮できることを示すことが重要です。
訓練期間中に給付金はもらえますか?
キャリアサポーター養成科は、求職者支援訓練または公共職業訓練として実施されることが多いです。雇用保険を受給できない方が求職者支援訓練を受講する場合、一定の要件(世帯収入や出席率など)を満たせば、職業訓練受講給付金(月10万円+交通費)を受け取りながら受講できます。雇用保険を受給中の方が公共職業訓練を受講する場合は、失業給付を受けながら訓練を受けることができます。詳細な要件はハローワークで確認しましょう。
どんな人がこの訓練に向いていますか?
人の成長や自己実現を支援することに興味がある方、コミュニケーションスキルを高めたい方、人材業界や企業の人事部門で働きたい方に向いています。また、おおむね3年以上の仕事経験があると望ましいとされています。これは、自身の職務経験が相談者への共感や助言に活きるためです。ただし、これは絶対条件ではなく、未経験でも意欲があれば受講できるケースもあります。
訓練で学んだスキルは他の職種でも役立ちますか?
はい、非常に役立ちます。訓練で学ぶ傾聴スキル、信頼関係構築のスキル、コミュニケーションスキルは、接客・販売職、介護職、営業職、カスタマーサポートなど、人と関わる仕事全般で活用できます。特にロールプレイを通じて学ぶ「相手の話を聴く力」「共感する力」「適切に助言する力」は、どのような職種でも重宝される汎用性の高いスキルです。キャリア支援の仕事に直接就かなくても、十分に価値のある学びといえます。