職業訓練の役に立つ話

教育訓練休暇給付金とは?条件・給付額・期間・住民税までわかりやすく解説

「プログラミングやAIを本気で学びたい。でも、仕事を続けながらじゃ時間が足りない」

「かといって会社を辞めてまで挑戦するのは、お金の面で怖すぎる」

こう感じている方は少なくありません。学び直したい気持ちはあるのに、収入がなくなる不安が壁になって動けない。こうした悩みを抱えている方は多いはずです。

そんなときに知っておきたいのが、2025年10月にスタートした「教育訓練休暇給付金」という新しい制度です。会社を辞めなくても、学ぶための休暇を取って、その間の生活費を給付金として受け取れる仕組みになっています。

ただし、この制度には落とし穴もあります。「受給すると失業保険がもらえなくなる」「会社に休暇制度がないと使えない」など、知らずに申請すると後悔しかねないポイントが複数あります。この記事では、制度の中身だけでなく、デメリットや使えない場合の代わりの方法まで、わかりやすくまとめました。

■目次

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教育訓練休暇給付金とは?ざっくり全体像を知ろう

教育訓練休暇給付金は、厚生労働省が管轄する雇用保険の制度のひとつです。2025年(令和7年)10月1日に、雇用保険法の改正によって新しく作られました。

ものすごくシンプルに言うと、「勉強するために会社を休んでいる間、生活費の一部を国がカバーしてくれる」という仕組みです。

従来の「教育訓練給付金」とは別物

名前がそっくりなので混同しやすいのですが、目的がまったく違います。

項目 教育訓練給付金(従来) 教育訓練休暇給付金(新制度)
何を支援? 講座の受講料を一部補助 休んでいる間の生活費を支援
誰が使える? 在職者・離職者どちらもOK 在職者のみ
金額の決め方 受講費用の○% お給料をもとに計算
ひとことで言うと 学費を安くする制度 収入の穴を埋める制度

つまり、従来の制度は「学費の負担を軽くする」もの、新制度は「休んでいる間の生活費を助けてくれる」ものです。条件が合えば、両方あわせて使える可能性もあります。

【要注意】受給すると雇用保険の加入期間が「リセット」される

受給条件の話に入る前に、この制度で最も注意すべきポイントをお伝えします。

それは、「この給付金をもらうと、それまで積み上げた雇用保険の加入期間がゼロに戻ってしまう」ということです。

最大の罠:被保険者期間リセットの恐怖

加入期間リセットの何が怖い?

  • 給付金をもらった時点で、過去の雇用保険の加入期間がリセットされる
  • 休暇後すぐに退職すると、加入期間が足りず失業保険がもらえなくなる可能性がある
  • 「とりあえず給付金をもらって休んで、そのあと辞めよう」はかなり危険

失業保険(基本手当)をもらうには、原則として退職前の2年間に12か月以上の加入期間が必要です。教育訓練休暇給付金をもらうとこの期間がリセットされるため、その後の転職や退職のタイミングに大きく影響します。「休暇が終わったらすぐ辞めよう」と考えている方は、特に慎重に検討してください。

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受給できる3つの条件|すべて満たさないと使えない

この制度を使うには、次の3つの条件を全部クリアする必要があります。ひとつでも該当しなければ対象外です。

条件①:雇用保険の加入期間が足りているか

単に「5年以上働いていた」だけでは足りません。次の2つの期間要件を両方とも満たす必要があります。

  • 直近の要件:休暇を取る前の2年間に、雇用保険に12か月以上加入していること
  • 通算の要件:これまでの雇用保険加入期間が、合計で5年以上あること

転職経験がある方は、前の会社を辞めてから次の会社に入るまでのブランクが1年以内であれば、加入期間を合算できます。自分が条件を満たしているかどうかは、ハローワークで調べてもらえます。

条件②:会社に「教育訓練休暇」の制度があること

ここが一番のハードルです。

「自分が学びたい」という気持ちだけでは使えません。会社が就業規則などで「教育訓練のための休暇制度」を用意している必要があります。

厚生労働省の調査(令和5年就労条件総合調査)によると、この制度を導入している企業は全体のわずか3.4%です。大手企業では導入が進みつつありますが、中小企業では「そもそもこの制度を知らない」というところがほとんどです。

「うちの会社には制度がない」と分かっても、この記事の後半で紹介する代わりの方法があるので、そちらもあわせて確認してみてください。

条件③:対象になる教育訓練を受講すること

この制度が使える学びの範囲は、実はけっこう広いです。ハローワークが指定した講座だけに限りません。

  • 大学・大学院での学び直し
  • 教育訓練給付金の対象になっている講座を持つ機関での受講
  • 語学留学や海外の大学院での修士号取得なども対象になりえる

もらえる日数は「最長1年」ではない!90日〜150日が上限

「1年間休めば1年分もらえる」と思い込むのは危険です。実は、給付金が出る日数には上限があります。

「受給期間」と「所定給付日数」を混同しないこと

この制度では2つの言葉をきちんと区別する必要があります。

  • 受給期間(最長1年間):給付金を受け取れる「有効期限」のこと。1年以内であれば、休暇を何回かに分けて取ることもできる
  • 所定給付日数(90日・120日・150日):実際にお金が振り込まれる「上限日数」のこと。雇用保険の加入期間で決まる

つまり、1年間の休暇を取ったとしても、給付金が出るのは最初の90日〜150日分だけです。それ以降は給付なしの無給状態になるため、事前にお金の計画を立てておくことが欠かせません。

雇用保険の加入期間別・もらえる日数

雇用保険の通算加入期間 もらえる日数
5年以上〜10年未満 90日
10年以上〜20年未満 120日
20年以上 150日

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給付金はいくらもらえる?計算方法と金額の目安

給付額は、失業保険とまったく同じ計算方法で決まります。

計算のステップ

  • 直近6か月のお給料の合計(ボーナスは除く)÷ 180日 = 賃金日額
  • 賃金日額 × 給付率(50〜80%)= 1日あたりの給付額
  • 1日あたりの給付額 × もらえる日数(90〜150日)= トータルの支給額

給付率は50〜80%と幅があります。お給料が低い方ほど高い割合が適用されるので、「収入が少ないから雀の涙しかもらえない」ということにはなりません。

月収ごとのだいたいの目安は次のとおりです。

休暇前の月収(額面) 給付率の目安 1か月あたりの給付金(概算)
20万円 約70〜80% 約14万〜16万円
25万円 約65〜75% 約16万〜19万円
30万円 約55〜65% 約17万〜20万円
35万円 約50〜60% 約18万〜22万円

なお、この給付金は非課税です。所得税も住民税もかかりません。

見落としがちな落とし穴|休暇中に「出ていくお金」を把握しよう

「給付金がもらえるからお金の心配はいらない」と思ったら要注意です。休暇中にも確実に出ていくお金があるので、ここをきちんと把握しておきましょう。

もらえるお金 vs 出ていくお金(月収30万円の例)

健康保険・厚生年金|在籍中なので払い続ける

教育訓練休暇中も会社に在籍しているため、健康保険や厚生年金はそのまま続きます。ただし、給与が出ないので会社からの天引きができません。

つまり、休暇前と同じ額の社会保険料を自分で支払う必要があるということです。月収30万円の方なら、毎月4万〜5万円くらいかかります。払い方(振り込みなのか口座引き落としなのか等)は、休暇に入る前に会社と決めておきましょう。

住民税|前の年の収入で決まるから減らない

住民税は「前の年にいくら稼いだか」で金額が決まります。今年がどれだけ収入が少なくても、去年の所得に基づいた金額がそのまま請求されます。

給与天引き(特別徴収)ができなくなると、自分で納める「普通徴収」に切り替わり、年4回にまとめて請求が届きます。まとまった額の請求に驚く方も多いので、年間の住民税額を事前に確認しておくと安心です。

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教育訓練休暇給付金が使えないときの4つの方法

「会社に制度がないから自分には関係ない」と思った方、ちょっと待ってください。キャリアアップのための支援制度は、ほかにもちゃんとあります。

この制度が使えない場合の4つのルート

(1)「教育訓練給付金」で学費を安くする

休暇給付金は使えなくても、学費の補助である「教育訓練給付金」は会社の制度に関係なく申請できます。夜間や土日、オンラインで学べる講座も多いので、働きながらでも利用しやすいのが特長です。

  • 専門実践教育訓練:受講費用の50〜70%を補助(資格取得や賃金アップなどの条件を満たすと、追加で最大80%・年間最大64万円まで)
  • 特定一般教育訓練:受講費用の40%(上限20万円)

(2)退職して本格的に学ぶなら「教育訓練支援給付金」

思い切って退職し、フルタイムで学びたい方には、離職者向けの「教育訓練支援給付金」があります。専門実践教育訓練を受ける離職者に、生活費を支援してくれる制度です。

注意:2025年4月の法改正で給付率が変わりました

以前は基本手当日額の80%でしたが、2025年4月以降は60%に引き下げられています。また、離職時に45歳未満であることが条件です。

(3)会社の既存の休暇制度を活用する

教育訓練休暇制度がなくても、会社によっては「リフレッシュ休暇」や「自己啓発休暇」が就業規則にあるかもしれません。有給休暇を計画的に使って短期集中で学んだり、リモートワークを活用して通学時間を確保するのもひとつの方法です。

(4)会社に制度の導入を提案する

実はこの制度、会社側にもメリットがあります。「人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)」という助成金があり、会社が休暇制度を導入して従業員が実際に休暇を取ると、会社に対して経費や賃金の一部が助成されます。

「自分のためだけでなく、会社にも助成金のメリットがあります」と伝えれば、人事担当者に検討してもらえるかもしれません。

手続きの流れ|何から始めればいい?

  1. 受講したい教育訓練を決める:大学院、語学留学、指定講座など、対象になるか確認
  2. 会社の制度を確認する:就業規則に教育訓練休暇の規定があるか、人事に聞いてみる
  3. ハローワークで条件を確認する:加入期間が足りているか、制度の利用条件を聞く
  4. 会社と休暇の条件を決める:いつからいつまで休むか、社会保険料の払い方などを詰める
  5. ハローワークで申請する:必要書類を提出し、支給決定を受ける

【始める前にチェック!】

  • 加入期間が「直近2年で12か月以上」かつ「通算5年以上」あるか
  • 会社に教育訓練休暇制度があるか(就業規則を確認)
  • 自分がもらえる日数は90日・120日・150日のどれか
  • 休暇中の社会保険料の払い方を会社と決めたか
  • 受給すると加入期間がリセットされることを理解しているか

まとめ:「もらえるお金」と「リスク」の両方を必ず確認しよう

教育訓練休暇給付金は、会社を辞めずにスキルアップに挑戦できる心強い制度です。ただ、使う前に知っておくべきことがいくつかあります。

利用前に確認すべき5つのポイント

  • 【最重要】受給すると雇用保険の加入期間がゼロにリセットされる
  • 会社の導入率はたった3.4%。使えない場合は代わりの方法を検討する
  • 1年間休んでも、お金がもらえるのは90日〜150日分だけ
  • 給付額はお給料の50〜80%。全額ではない
  • 社会保険料や住民税は休暇中も自分で払い続ける

会社に制度がなくても落ち込む必要はありません。通常の教育訓練給付金(学費の補助)や、離職者向けの教育訓練支援給付金(生活費の支援、給付率60%)など、自分に合った方法はほかにもあります。

大切なのは、使える制度を正しく知ること。それがリスキリング成功への第一歩です。

■リンク

よくある質問(FAQ)

Q1:教育訓練休暇給付金を使った後に退職したらどうなる?

給付金を受け取った時点で雇用保険の加入期間がリセットされます。そのため、退職しても加入期間が足りず(原則12か月必要)、失業保険がもらえなくなる可能性が高いです。「休暇後に辞めるかも」と思っている方は、慎重に判断してください。

Q2:この給付金は誰でも使える?

使えません。雇用保険の加入期間の要件(直近2年で12か月以上+通算5年以上)を満たし、会社に教育訓練休暇制度があり、対象の教育訓練を受講する、という3つの条件すべてを満たす必要があります。

Q3:1年間休んだら1年分の給付金がもらえる?

もらえません。休暇を取れる期間は最長1年ですが、給付金が出る日数は加入期間に応じて90日・120日・150日のいずれかです。それ以降は無給になります。

Q4:専門実践教育訓練なら誰でも「最大80%」の補助が受けられる?

受けられません。基本の補助率は50〜70%です。最大80%になるのは、資格を取得したうえで卒業後に賃金が上がるなど、厳しい条件を満たした場合だけです。

Q5:退職して学ぶ場合の「教育訓練支援給付金」はいくらもらえる?

離職時に45歳未満で、専門実践教育訓練を受講するなどの条件を満たすと、基本手当日額の60%が支給されます。2025年4月の法改正で、以前の80%から60%に引き下げられました。

参考・出典

  • 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「教育訓練休暇給付金のご案内(パンフレット)」
  • 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」
  • 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」
  • 厚生労働省「教育訓練給付制度の拡充について(令和6年10月〜)」
  • 厚生労働省「人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)」

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