職業訓練の役に立つ話

職業訓練でセクハラ・パワハラを受けたら?相談先と辞める判断基準

職業訓練に通いたいけれど、「セクハラやパワハラがあったらどうしよう」「講師から嫌がらせを受けたら我慢するしかないの?」と不安を感じていませんか。

残念ながら、職業訓練校でもハラスメントは起きています。受講生同士のトラブルだけでなく、講師や校長といった訓練校側の立場の人間によるセクハラ・パワハラも一定数報告されています。

けれど、泣き寝入りする必要はありません。相談先と動き方を知っておけば、状況を変えることができます。自分の身を守る方法は、ちゃんとあるのです。

この記事では、職業訓練中に起こりうるセクハラ・パワハラの実態、具体的な相談先と対処の流れ、証拠の残し方、そして「訓練を続けるべきか辞めるべきか」の判断基準まで、実務的な視点から詳しく解説します。

■目次

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職業訓練校で起こるハラスメントの実態

職業訓練には、年齢も経歴もさまざまな人が集まります。ほとんどの受講生は真面目に授業を受け、就職という目標に向けて取り組んでいます。

しかし、一般の会社と同じように、どこにでも問題を起こす人はいるものです。受講生同士のトラブルもありますが、実は職業訓練校の校長や講師によるハラスメントが問題になるケースもあります

「講師・校長」と「受講生」では立場が違います。受講生側は「言ったら不利になるのでは」と不安になりやすく、声を上げにくい構造になっている点が厄介です。

受講生同士のハラスメント

受講生同士でも、以下のような問題行動が起こることがあります。

  • 特定の人につきまとう
  • 他の受講生に高圧的に当たる
  • 授業中に騒ぎ出す
  • グループ内で特定の人を無視する・仲間外れにする

こうした行為は、本人が「ハラスメント」と自覚していないケースも多いのが特徴です。「ちょっとしたからかい」のつもりが、受けた側にとっては深刻な苦痛になっていることもあります。

講師・校長によるハラスメント

より深刻になりやすいのは、講師や校長といった訓練校側の立場の人間によるハラスメントです。権限を持つ側からの行為は、受講生が「逆らえない」と感じやすく、被害が長期化しやすい傾向があります。

  • 講師が受講生につきまとう
  • 講師が特定の受講生に対してパワハラを行う
  • 校長が受講生に不適切な接触をする

実際に、校長が受講生につきまとったという事例も報告されています。「まさか校長が」と思うかもしれませんが、立場があるからこそ表面化しにくいのです。

セクハラの具体例と知っておくべきこと

職業訓練校におけるセクハラは、受講生同士だけでなく、講師から受講生へのケースも発生しています。訓練校側は受講生の個人情報(住所、電話番号、家族構成など)を把握しており、講師がそれを利用できる環境にある場合も多いため、立場を利用したセクハラが起きやすい側面があります。

講師によるセクハラの具体例

  • 身体に不必要に触れる
  • 食事やデートに繰り返し誘う
  • 個人情報を利用して私的な連絡をする
  • 断ると授業中に嫌がらせをする(報復行為)
  • 性的な冗談や発言を繰り返す
  • 特定の受講生を見つめ続ける、つきまとう

セクハラ

こうした講師は、一度だけでなく繰り返す傾向があります。過去にも同様の行為をしている可能性が高く、あなたが声を上げることで次の被害者を防ぐことにもつながります。

講師にとって、セクハラ問題が表面化することは職を失うリスクに直結します。だからこそ、適切に報告すれば状況が改善される可能性は十分にあるのです。

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パワハラの具体例と背景

講師から受講生に対するパワハラは、セクハラ以上に多いケースです。

講師によるパワハラの具体例

  • 特定の受講生だけに高圧的な態度を取る
  • 「お前はもうだめだ」「向いてない」など人格を否定する発言
  • 授業中に特定の受講生を執拗に批判する
  • 「どこでもいいから就職しろ」と就職先を強要する
  • 就職活動の進捗を必要以上に詰める
  • 他の受講生の前で恥をかかせる

パワハラ

なぜ就職の強要が起きるのか

職業訓練校には、就職率を上げなければならない事情があります。就職率が低いと、国からの助成金が減額されたり、次回以降のコースが開講できなくなったりする場合があるためです。

訓練初日から「早めの就職活動」を促すこと自体は一般的です。しかし、それが行き過ぎると、受講生の希望や状況を無視した「どこでもいいから就職しろ」という態度になり、パワハラにつながります

就職先は、ハローワークと相談しながら本人が決めるものです。講師が無理やり就職先を押し付けることは認められません。

ハラスメントを受けたときの対処の流れ

セクハラでもパワハラでも、対処の基本的な流れは同じです。多くの受講生は訓練終了まで我慢してしまいがちですが、我慢する必要はありません。以下の順番で動くと、状況を整理しやすくなります。

職業訓練でハラスメントを受けた時のフローチャート

ステップ1:記録を残す

まず最優先でやるべきことは、証拠を残すことです。

【記録しておくべき情報】

  • いつ(日付と時間帯)
  • どこで(教室、廊下、休憩室など)
  • 誰が(講師名、受講生名)
  • 何をした・何を言った(できるだけ具体的に)
  • 目撃者がいたか(誰が見ていたか)

メールやメッセージのやり取りがあれば保存してください。パワハラ発言の録音(スマホの録音機能など)も有力な証拠になります。証拠は後から「言った・言わない」の争いになったときに決定的な力を持ちます。

ステップ2:信頼できる人に相談する

一人で抱え込まないことが大切です。まずは以下のような身近な人に話してみましょう。

  • 他の講師(信頼できる講師がいる場合)
  • 同じ訓練を受けている受講生
  • 家族や友人

「自分が悪いのかも」「大げさに考えすぎかも」と思うかもしれませんが、客観的な視点をもらうことで状況が整理されます。

ステップ3:ハローワークに相談・報告する

ハラスメントが改善されない場合、またはしつこいセクハラや報復的な嫌がらせがある場合は、ハローワークに相談・報告しましょう。

ハローワークは訓練校を委託・指定している立場です。つまり、訓練校に対して状況確認や指導を行う権限があります。

ハローワークへの相談のコツ

「いつ・どこで・誰が・何をした(言った)」を、記録に沿って淡々と伝えてください。感情的に訴えるよりも、事実を整理して伝える方が、相手も対応しやすくなります。

ステップ4:訓練校の運営元に直接相談する

民間の訓練施設の場合、校内の相談窓口とは別に、訓練校を運営している法人・会社に直接相談するという方法もあります。

運営会社は国や県から助成金(委託費)を受けている立場なので、ハラスメント問題が表面化し、今後の契約継続に影響が出ることを懸念します。そのため、直接連絡することで対応が進むケースもあります。

ステップ5:外部の相談窓口を利用する

訓練校やハローワークで対応が進まない場合は、外部の相談窓口も利用できます。

  • 都道府県労働局(職業対策課や総合労働相談コーナーなど):訓練校の指導監督を行う部署や、トラブル相談窓口
  • 法テラス(無料法律相談):法的な対応が必要な場合
  • 警察:身の危険を感じる場合、つきまといがエスカレートしている場合

身の危険を感じるレベルの場合は、訓練のことより先に安全確保を優先してください。つきまといや待ち伏せがエスカレートしている場合は、迷わず警察に相談しましょう。

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訓練を続けるべきか、辞めるべきか

ハラスメントを受けた場合、訓練を続けるべきか辞めるべきか、非常に悩むところです。以下の判断基準を参考にしてください。

職業訓練でハラスメント。今の状況はフローチャート

訓練を続けた方が良いケース

  • ハローワークや運営元に相談し、状況が改善される見込みがある
  • 訓練修了まで残り期間が短い(1ヶ月以内など)
  • 資格取得が目前で、途中退校すると受験機会を失う
  • 他の受講生や講師のサポートが得られる
  • 心身の健康に深刻な影響が出ていない

訓練を辞めた方が良いケース

  • 心身に深刻な影響が出ている(不眠、食欲低下、抑うつ状態など)
  • ハラスメントがエスカレートしており、改善の見込みがない
  • 訓練校やハローワークに相談しても対応が進まない
  • 身の危険を感じるレベルのハラスメント

途中退校のデメリットを理解した上で判断する

訓練を途中で辞める場合、以下のデメリットがあることを理解しておきましょう。

退校理由による給付金の違い

  • 失業保険の訓練延長給付が打ち切られる
  • 自己都合退校の場合、基本手当に給付制限がかかる(※)
  • 職業訓練受講給付金(月10万円)の支給が停止される
  • 訓練期間中に取得予定だった資格が取れなくなる可能性がある

※給付制限に関する注意

2025年4月の法改正で一般の自己都合退職の給付制限は「原則1ヶ月」となりましたが、職業訓練を自己都合で辞めた場合は、別途「1ヶ月」の給付制限がかかるケースが一般的です(悪質な場合は最大3ヶ月)。期間等はハローワークの判断となります。

ただし、ハラスメントが「やむを得ない理由(正当な理由)」と認められれば、給付制限は免除されます。認定されるためには、医師の診断書やハローワークへの相談実績が必要です。

自己判断で退校を決める前に、必ずハローワークに事前相談し、「ハラスメントにより通学困難である」という記録を残してください

相談・報告する際に意識すべきこと

相談の効果を高めるために、以下のポイントを意識してください。

事実を具体的に伝える。「なんとなく嫌な感じ」ではなく、「○月○日の授業中に、○○講師が○○と発言した」と具体的に伝えましょう。記録があれば、それに沿って話すだけで十分です。

感情的にならず、淡々と事実を述べる。怒りや悲しみは当然の感情ですが、相談の場ではできるだけ冷静に。事実を正確に伝えることで、相手も対応しやすくなります。

複数の相談先を確保する。一つの相談先で動いてくれない場合もあります。ハローワーク、訓練校の運営元、労働局、法テラス。選択肢は複数あります。一つがダメでも諦めないでください。

一人で抱え込まない。同じ訓練を受けている信頼できる受講生、家族、友人。誰かに話すだけでも、精神的な負担は軽くなります。一人で追い詰められる前に、周りの力を借りてください。

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まとめ:我慢する必要はない

人と人とのトラブルはどこでも起こりえます。会社でも地域でも、職業訓練校でも同じです。

しかし、「これは行き過ぎている」と感じたなら、我慢する必要はありません。あなたが声を上げることで、次の被害者を防ぐことにもつながります。

この記事のポイント

  • 証拠を残す(日時・場所・内容・目撃者をメモ)
  • ハローワークは訓練校に対して指導する権限がある
  • 外部の相談先(労働局・法テラス・警察)も使える
  • 途中退校は事前にハローワークに相談してから判断する
  • 心身の健康は、お金や資格よりも優先すべき

職業訓練は、あなたの将来のキャリアを築くための大切な機会です。ハラスメントによってその機会が損なわれることがあってはなりません。適切な相談先を知り、自分の身を守りながら、訓練を有意義なものにしてください。

よくある質問

セクハラやパワハラを相談すると、訓練校での評価が下がりますか?

適切な相談先(ハローワークや労働局など)に相談した場合、正当な相談を理由に不利益を受ける扱いは本来認められません。訓練実施機関には適切な運営が義務付けられているため、報復的な対応があればハローワーク等からの指導対象となります。不安な場合は、相談した日時・相手の名前・やり取りの内容も記録しておくと安心です。

ハラスメントの証拠がない場合でも相談できますか?

はい、証拠がなくても相談は可能です。ただし、客観的な証拠があると対応がスムーズに進むため、今からでも日時や内容をメモしておくことをおすすめします。複数の被害者がいたり、他の受講生の証言があったりすれば、証拠がなくても信憑性は高まります。

訓練を途中で辞めた場合、失業保険はどうなりますか?

ハラスメントが「やむを得ない理由」と認められれば、基本手当の残日数がある場合にかぎり、給付制限なしで受給できる可能性があります。そのためには、医師の診断書(訓練継続が困難である旨の記載)や、ハローワークへの相談記録など、客観的な証明が不可欠です。これらがない自己都合退校の場合、給付制限がかかる可能性があるため注意してください。

講師のセクハラを他の受講生も受けている場合、どうすればいいですか?

複数の被害者がいる場合、一緒に相談・報告することで信憑性が高まり、訓練校やハローワークも対応しやすくなります。被害を受けている受講生同士で情報を共有し、一緒にハローワークや運営元に相談することをおすすめします。

パワハラで就職先を強要された場合、どうすればいいですか?

就職先の選択はハローワークと相談しながら本人が決めるものであり、講師が無理やり押し付けることはできません。もし強要された場合は、ハローワークに相談すれば訓練校に対して指導が入る可能性があります。

訓練校の運営元に相談しても対応してくれない場合は?

運営元が対応しない場合は、ハローワークや都道府県労働局に相談してください。公的機関は訓練校を監督する立場にあり、特に労働局の「総合労働相談コーナー」などは職場トラブルの専門窓口として相談に乗ってくれます。

訓練修了後でもハラスメントの被害を訴えることはできますか?

はい、可能です。訓練期間中は報復を恐れて声を上げられなかった場合、修了後に相談・報告する方も少なくありません。証拠が残っていれば、ハローワークや労働局に相談してください。次の受講生を守るためにも、声を上げることには意味があります。

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